Accueil レヴュー舞台コンサート アンサンブル・レ・ザパッシュ オルセーライブで「動物誌」のコンサート

アンサンブル・レ・ザパッシュ オルセーライブで「動物誌」のコンサート

par Victoria Okada

1月5日、アンサンブル・レ・ザパッシュ Ensemble Les Apaches とバリトン歌手ステファン・ドゥグー Stéphane Degout が、オルセーライブで動物を扱った作品を集めたコンサートを披露した。
オルセーライヴは、オルセー美術館内で収録した5つの独自の音楽プログラムを、昨年12月から今年1月にかけて毎週火曜日18時から美術館のサイトとYouTubeで配信したもの。

Ensemble Les Apaches © Odile Motelet

アンサンブル・レ・ザパッシュは、指揮者ジュリアン・マスモンデ Julien Masmondetと作曲家パスカル・ザヴァロ Pascal Zavaro が若く優れた音楽家たちを集めて結成したアンサンブル。2018年に上演されたザヴァロのオペラ『マンガカフェ』(独占座談会参照)で初めて舞台に登場した。この当時はまだ決まった名もなく、2年後の2020年1月に正式な結成お披露目コンサートをパリのアテネ劇場で行なった。
レ・ザパッシュとは、1900年ごろにラヴェルを中心に音楽家、詩人、彫刻家、評論家などが集まったアーティスト集団。新進の気風に富み、当時支配的だったアカデミズムを破る気概に溢れた芸術家たちがジャンルを超えて集っていた。そんなエスプリ(精神)を21世紀の現代に引き継ぎ、新鮮味あふれる演奏を目指している。

この日のコンサートのプログラムは、12月から5月に予定されていた展覧会「Les origines du monde, invention de la nature(世界の起源 自然の発明)」* にちなんだもの。ダリウス・ミヨーの『世界の創造 Création du monde 』に始まり、ザヴァロの『絶滅動物誌 Bestiaire disparu 』(2013年)、ギヨーム・アポリネールの詩によるフランシス・プーランクの『動物詩集またはオルフェの行列 Le Bestiaire ou Cortège d’Orphée 』(バリトンと7人のアンサンブルのための初版オリジナル版)、ジュール・ルナールの詩にラヴェルが作曲した『博物誌 Histoire naturelle 』(アントニー・ジラールの新オーケストレーション)、そしてザヴァロの『奇怪動物誌 Bestiaires chimériques 』(2020年)の世界初演。

Stéphane Degout

『奇怪動物誌』は、ゴヤ、マルコ・ポーロ、フローベール、テニソンなどが想像上の奇怪な動物を描写したテキストに作曲したもの。ヴァイオリンとチェロのデュオの『絶滅動物誌』もそうだが、それぞれの動物の想像上の性格(「想像上の」というのは、絶滅してしまった動物も、実際にいない奇怪動物も、その様子は想像するしかないからだ)を音楽で表現している。それは明らかにラヴェルの系譜に連なるものだ。ザヴァロの音楽には必ずどこかにユーモアが感じられ、聴く人を全く拒否せずに招き寄せるような人懐っこさがある。現代にクリエートされる音楽には、聴く側が心の準備をしないと受け付けてくれないようなものもあるが、彼の音楽にはそういう身構えが一切必要ない。逆に、いったん始まると最後まで惹きつけられるものも多い。『奇怪動物誌』の中には、異界的な湿った雰囲気を持つ曲もあるが、『絶滅動物誌』は(今回、ミヨー、ラヴェル、そしてザヴァロ自身の新作と交互に2曲づつ演奏されている)、気安く入り込める作品に属している。各曲は1〜2分と短く、ヴァイオリンのマグダレーナ・シピニエフスキとチェロのアレクシ・ドルアンの演奏からは、すでに存在しない動物たちをしばしノスタルジックに回想するような感覚を覚える。

Magdalena Sypniewski (violon) et Alexis Derouin (violoncelle)

プーランクの『動物詩集』とラヴェルの『博物誌』そしてザヴァロの『奇怪動物誌』は歌曲で、フランス語作品の演奏ではとくに高い評価を得ているバリトンのステファン・ドゥグーが、いつもながらの入念な演奏で見事に歌い上げている。声の伸び、歌詞の発音、表現の的確さ、発声の確実さなど、彼の長所を存分に聞かせてくれる。

Julien Masmondet © Neda Navaee

ジュリアン・マスモンデの指揮は指示が明確で、大きなオーケストラを指揮しているようにも見える。実はマスモンデは、現在NHK交響楽団の首席指揮者を務めるパーヴォ・ヤルヴィがパリ管弦楽団の音楽監督を務めていたとき、彼のアシスタントだったのだ。アンサンブルの一員のように指揮者と向き合う形で歌うドゥグーにも適宜指示を入れつつ、熱のこもった、しかし冷静な振りでアンサンブルをよく導いている。大オーケストラをどのように振るのかを見たくなる演奏だ。

La Création du Monde - Le printemps et l'apaisement
Orsay Live - Ensemble Les Apaches

このビデオはフランソワ=ルネ・マルタン(ラ・フォル・ジュルネの音楽監督ルネ・マルタン氏のご子息)とゴードンの名コンビが監督を務めている。オルセー美術館の広い空間を遠景・中景で効果的に見せながら、音楽家たちはしばしば専用のプリズム(というのだろうか、短冊状のアクリルまたはガラスを数個吊るして設置した、撮影効果用オブジェ)を通して撮影し、近景とコントラストを出している。彫刻などを映し出すアングルも美しい。編集ではオルセー美術館所蔵の絵画作品の部分を作品の題名と重ね合わせているが、絵画の選択といい、部分のアップといい、センスが光っている。このコンビはパリ管弦楽団の演奏を撮影した Quinte & Sens という非常に美的感覚の高いビデオも手がけており、最近ネットとテレビ(やはりArte局)で公開されたばかり。どれも、音楽と映像が密接にマッチした素晴らしい仕上がりとなっている。

* 新型コロナウィルスに対する衛生措置により美術館が閉鎖されていることから、展覧会はまだ開催されておらず、開催されないまま終了する可能性も出てきている。

キャプション記載以外の写真は 全て配信画面キャプチャ

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