Accueil レヴューアート グリマルディ・フォーラムの「ターナー 崇高なる遺産」展

グリマルディ・フォーラムの「ターナー 崇高なる遺産」展

ターナーと現代アーティストが対話するモナコでの大規模展

par Victoria Okada

現在、モナコのグリマルディ・フォーラム (Grimaldi Forum)では、9月1日まで「ターナー、崇高なる遺産 Turner, le sublime héritage展が開催されている。ロンドンのテート・ブリテンからウィリアム・ターナーの作品が一挙に80点も貸し出されているが、テートからこれほど多くのターナーの作品が貸し出されるのは初めてで、注目を集めている。

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「崇高」

展覧会の題名は、「崇高 Sublime」と「遺産 Héritage」という二つのテーマを表している。「崇高 Sublime」とは、今回の展覧会にあたって、風景を中心に描いた ウィリアム・ターナー William Turner の根底に流れる考えや表現方法を名付けたものと捉えることができる。例えば全てを破壊するような雪崩に神々しさを見る「崇高」や、ほとんど抽象画と言えるような、形を極限まで取り払って「崇高な」光を表現したベニスの連作など、これまでの表現のスタンダードを大きく越えた見方、捉え方だ。自然を光を通じて表現するアプローチや抽象に通じる作風は、100年後にモネがルーアン大聖堂や蓮などの連作を通じて表現したように、印象派の画家たちが目指したものと深く通じるものがある。ターナーが時に印象派の先駆者とされる所以だ。

「遺産」

このようなモダンな、前衛的とも言える要素を見せるターナー作品が、私たちの時代に制作された作品と呼応することは理解に難くない。展覧会では、デンマークのオラファー・エリアソン Olafur Eliasson やイギリスの彫刻家リチャード・ロング Richard Long をはじめとする15人の現代アーティストの作品と対話を繰り広げる。特に、並んで展示されているターナーとマーク・ロスコ Mark Rothko の類似性には驚かされる。ロスコはターナーを好み尊敬していたというが、展覧会の最後の方に余分なものを全て取り払って色のニュアンスだけで描いたロスコの作品を持ってくることで、ターナーがどれほど時代の先を歩んでいたかを理解できる。彼が後の世代にどれほどの影響を与えたかを感じ取るのに最適な、粋な展示となっている。

 

暗闇、自然、光

ウィリアム・ターナーは、自身の作品が展示されている部屋に入る前に、ゲストに暗い部屋で待機するよう求めたと言う。暗闇の中で過ごすひとときが「精神を浄化し(中略)視覚の感受性を高める」と考えていたからだ。これを受けて、「ターナー、崇高なる遺産」展ではまず薄暗い部屋が待っている。中央には、スコットランド出身の現代アーティスト、ケイティ・パターソン Katie Paterson の作品《トタリティ》。1万枚の皆既日食の写真がミラーボールに集められ、常に回り続ける光のショーが繰り広げられている。部屋自体は薄暗いが、壁に星のように投影された無数の光は明るく、それがくるくると回る様に、まるで重力を失ったように感じられる。自然と光。これらはターナーの作品に欠かせない概念であり、「崇高」と密接に関連している。

最初の展示室。向こう Kate Peterson のインスタレーションが見える © GRIMALDI FORUM MONACO 2024 – Eric Zaragoza

 

 

広い会場でゆったり鑑賞

もともと展示会場であるグリマルディ・フォーラムの広大なスペースを有効に活用したセノグラフィーは、ゆったりと鑑賞するのにうってつけ。大きな作品も、距離をとって全体を鑑賞したり、至近距離から筆遣いを追ったりと、思うような楽しみ方ができる。人混みに押されて絵の前を通り過ぎるだけの話題の大展覧会とは異なった見方ができるのが魅力だ。

2024年7月6日から9月1日まで
モナコ、グリマルディ・フォーラム Grimaldi Forum、エスパス・ラヴェル (Espace Ravel)

 

 

 

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