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サン=サーンスの『フリネ』、ルーアンでレコーディング

par Victoria Okada

昨3月31日から4月2日の3日間、ルーアン・ノルマンディー歌劇場管弦楽団コンセール・スピリテュエル合唱団が、エルヴェ・ニケの指揮のもと、カミーユ・サン=サーンスの唯一のユーモラスなオペラ『フリネ』(ギリシャ史ではフリュネ)をルーアン・ノルマンディー歌劇場で録音。パラゼット・ブル・ザーネ によるフランスオペラシリーズの新譜として来年リリースされる。初日の3月31日のセッションに立ち会った。

『フリネ Phryné 』は、サン=サーンス作曲の全2幕のオペラ・コミック*。1893年5月24日、パリのオペラ・コミック座での初演時には大成功を収め、メサジェやグノーも賞賛。サン=サーンスの存命中、彼のオペラでも最も有名な作品のなかに数えられていたが、現在では忘れられ、録音も片手で数えられるほどしかない。このたび、サン=サーンスの没後100年を機に、パラゼット・ブル・ザーネ=フランスロマン派音楽センター Palazetto Bru Zane – Centre de musique romantique française (PBZ) が作品を復活させた。

録音セッションは、リハーサルとレコーディングを交互に行う形式で進んだ。リハーサルでは、音楽に凹凸とコントラストを与えて表現をより豊かにすることに重点が置かれていた。指揮のエルヴェ・ニケ Hervé Niquet がユーモアを交えながらさまざまな例を引いて音楽をイメージ化すると、みるみる演奏や歌唱に奥行きが出る。まさに「変貌」だ。その変貌の鍵は、音楽をどのように作り上げていきたいかという明確な視野はもとより、たとえの豊富さにあるだろう。コンセール・スピリテュエル合唱団 chœur du Concert Spirituel には、入れ歯安定剤「ポリデント」のテレビCMを引いて言葉を音楽の中安定させるように要求したり、ルーアン・ノルマンディー歌劇場管弦楽団 Orchestre de l’Opéra de Rouen Normandie の大太鼓が「パンチ」をきかせて音楽に効果を持たせるために、「もっとバンバン叩いて! ブワ〜ンじゃなくて、バン!と派手に!」と何度も指示を繰り返す。やっと納得のいく音が出るようになってニケが「ほら、そうなんだよ」と満足すると、会場全体から打楽器奏者にやんやの喝采。ヴァイオリンには「乾いた鼻クソみたいな」音を求め、コーラスのフランス語の発音が曖昧なら「フランス語で歌ってくれたらすごくいいんだけどな」とコメント。もったいぶった(つまり滑稽な)勝利宣言の場面では、「もっとナポレオン3世みたいに!」と、フランス人の集団深層意識を蘇らせることも忘れない。まさに縦横無尽。短時間でこれほどまでに変わるのかという驚きとともに、魔術師のような指揮者の仕事に惹きつけられるばかりだ。

Phryné – Hervé Niquet © Le Philtre

ニケは、かつて数年間、クラシックとジャズが専門の国営ラジオ局フランス・ミュージック France Musique で週に一回、5分ほどのコラムを担当していた。音楽家の日常をユーモア溢れる口ぶりで、時にピアノや歌を交えながら披露するその語り口は、聴く人を魅了したものだ。
この日のセッションでは第一幕の終わりの部分を集中的に扱ったが、一つの場(シーン)が満足いくものに出来上がると、引き続き録音に移る。その連続性に、時にはリハとレコーディングの区別がつかない時もある。

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