フランスのノルマンディー地方カルヴァドスといえば、同名のリキュールで有名。もう一つ世界的に有名なのは、バイユーという街に伝わる全長70mに及ぶタペストリー。
タペストリーには、ノルマンディ公ギヨームが1066年のヘイスティングズの戦いで勝利してイングラントを征服し、ウィリアム征服王(Guillaume le conquérant) となった様子が、380のラテン語の記載とともに58のシーンに分けて刺繍で詳細に語られている。最後の2場面が欠損している。1066年4月にイングランドで見られたハレー彗星が描かれており、この彗星を明記した最古の文献となっている。
ノルマンディ公ギヨームがイングランドを征服する様子をギヨーム側の視点に基づいて叙事的に描いている。この出来事に関する歴史的文献が少ない中、貴重な一次資料となっている。場面を次から次へと連続的に表現している様子は、日本の絵巻とも共通する。
「マティルド王妃のタペストリー」とも呼ばれるこの長大な刺繍を全て詳細に閲覧できるサイトがある。バイユー博物館、ノルマンディ戦記念博物館、ジェラール男爵芸術歴史博物館からなる「3 Musées(3博物館の意)」の共同サイトが特別に開設しているもの。ここにある画像が、バイユーのタペストリーの公式デジタル画像だ。リンクはこちら。
ホームページにはタペストリーにまつわる主な数字が掲げられている。それによると、タペストリーに登場する人物は約600人で、他にも馬200頭、さまざまな動物500匹、樹木50種が、1500のモチーフに描かれている。
閲覧するには、ホームページを下にスクロールしてすぐに出てくる Le Panorama en haute définition (高解像パノラマ)の下の画像をクリック。画像の中心部には白文字で Explorer la tapisserie de Bayeux (バイユーのタペストリーを閲覧する)とある。
下方の点(数字)をクリックすると、58のシーンのうち数字に該当するシーンを見ることができる。
右メニューの「TXT」を開くと、タペストリーの各シーンにあるラテン文の翻訳を英語とフランス語で読むことができる。
歴史マニアはもちろん、そうでなくとも大いに興味をそそられるサイトだ。
追記 2月16日
美術専門誌 Connaissance des arts によると、2020年1月に行われたタペストリーの点検作業の結果が2月3日に発表され、2024年から2年間、全体的な「修復」作業が行われることになった。1000年近くの歳月による自然劣化と、壁に固定するために使われていた釘などによる人工的な劣化で破損することを食い止める処置を施す。
写真 © Ville de Bayeux, DRAC Normandie, Université de Caen Normandie, CNRS, Ensicaen, Clichés : 2017 – La Fabrique de patrimoines en Normandie