シャンティイ城では現在、アンドレ・シャルル・ブールに特化したフランス初の展覧会が開催されている。ブールは、寄木細工、象嵌、金銅装飾の技術で家具に革命をもたらし、ルイ14世に召された家具職人で、生前から高く評価されていた。パリ北部近郊シャンティイー城内の、コンデ公のグラン・アパルトマンで開催されている展覧会では、作品を精選して本物と断定された作品だけを展示。そのキャリアと革新性を詳しく紹介するものとなっている。
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アンドレ・シャルル・ブール André Charles Boulle はそれまでの調度品のコンセプトを覆し、現代へとつながる多くの革新を実現した稀有なアーティストだった。その作品は時代を越えて人気が高く常にリヴァイヴァルの対象となっているが、これまで、権威ある美術館などでさえ、贋作を本物として紹介することがあった。この展覧会にあたって、ブールの作品についてのより明確なビジョンを確立すべく、彼の工房にあった数多くの作品を厳密に分析し、資料や作品に対するいくつものアプローチを掛け合わせて多くの基準を構築*。これによって、作品が真正であると確実に判断できるようになった。このようにして、正真正銘の彼の作品であることが疑いのない家具のみが紹介されているというわけだ。
*会場には、3Dヴィジュアルを駆使してこれらの精巧な基準を易しく紹介するビデオがあり、ブールの作品の複雑さと制作技術の精巧さの一端を垣間見ることができる。
アンドレ・シャルル・ブール(André Charles Boulle, 1642-1732)は、17世紀後半から18世紀初頭にかけて、フランスの家具の発展に重要な役割を果たした。彼は、主に金属(真鍮、金銅など)・木(黒檀、クルミなど)・鼈甲・大理石その他を組み合わせた細かい寄木細工によるコモード(整理簞笥)や机などで特に有名。1710年代から摂政時代(1715-1723、ルイ14世の死後、幼かったルイ15世が成人するまでオルレアン公フィリップが摂政として政治を司った時代)初期にかけて多く制作された彼の平机は、半世紀以上にわたってフランスの机のスタイルを決定づけたほどだ。
*この絵画には、上の写真の平机の一部が描きこまれている。
この展覧会では、これらの形や装飾の発展をたどりながら、ブールの机の数々を紹介するかたわら、書棚、コンソール、チェスト、シャンデリアなど、彼の工房で製作された重要な作品も展示。国王や大公らの注文によって制作された約50点の主要作品が一堂に会し、フランスの調度品の素晴らしさに魅せられ、ブールの才能と創造性を存分に堪能できる素晴らしい機会となっている。
* ブールが手がけた唯一の書籍装丁
この展覧会は、その重要性と質の高さを証明するものとして、文化省から「国益展」ラベルを授与されている。厳選された展示作品を通して、ブールがフランス調度品の発展にどのような影響を及ぼしたかを知ることができる、非常に貴重な展覧会だ。
シャンティイー城 Château de Chantilly
10時〜18時(夏期)、火曜休館
パリ北駅grande ligneで約25分、Chantilly-Gouvieux駅で下車。その後、徒歩(約30分)かタクシー(約5分)