Accueil CD&DVD 24歳の逸材アルベルト・フェーロによる《音の絵》

24歳の逸材アルベルト・フェーロによる《音の絵》

par Victoria Okada

シチリア出身、1996年生まれのピアニスト、アルベルト・フェーロが初アルバムをリリースした。彼は2016年にエリザベト王妃国際音楽コンクールのピアノ部門で6位と聴衆賞を受賞して一躍名を知られるようになったが、実はコンクールの虫でもある。サイトを見ると、他にも国内コンクールであるプレミオ・ヴェネツィアコンクール(1位)、クララ・ハスキル(フィナリスト)、ブゾーニ(2位、国際プレス賞、ハイドン賞)、ベートーヴェン(1位、聴衆賞)、ルービンシュタインなどのコンクールに参加し受賞している。

コンクールを渡り歩く若いピアニストは、ともすれば驚くようなテクニックの陰に本来持っている音楽性が隠れてしまったり、テクニックで押してしまって音楽が二の次になったりするものだが、この録音を聴くと、フェーロはそんな次元をとっくに通り越していることがすぐに感じられる。

彼が初CDに選んだのは、ラフマニノフの《音の絵》op. 33 と 39。これらの何曲かは必ず国際コンクールのプログラムに組み込まれているので、以前から弾き込んでいる曲なのだろう。彼の演奏で一番好感が持てるのは、感傷的で大げさな表現に陥ることなく、テクニックがごく自然に表現の一部となっていること。そしてその表現からは、楽譜を読み込んでいることがうかがえる。音は密だが重くなく、タッチは繊細さとダイナミズムを兼ね備えている。どの曲を聴いても解釈に説得性かつ新鮮味があり、聴いていて飽きないのも大きな魅力だ。

ベルギーに拠点を置くレーベル「MUSO」は、他のレーベルにことごとく拒否された企画でも、アートディレクターのオリヴィエ・ヴァニユ氏の直感でいいと思うものを精力的に世に出している、職人的な性格を強く保っているのが特徴。パリで今年年頭に行われた国際音楽ジャーナリスト協会の会合に招待されたヴァニユ氏は、どのようなポリシーで企画を採用しますかという問いに対して「ポリシーは持たないようにしています。面白いと思う企画は無条件に合意することもあります」と語っていた。そんな氏が世に出したこの1枚。20年後、30年後に慧眼だったと言えることを大いに期待したい。

1 CD Muso, MU-036. 60’59

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