ドイツ的なものととフランス的なものが巧妙に溶け合ったショーソンの交響曲
第2部はエルネスト・ショーソンの交響曲。第1楽章序奏部の、ワグナー的な和声の暗いカオス的なものがどんどん盛り上がって第1主題で突然フランス的な明るさに変わるところは実にうまい。コーダ部分でさらに明るい開かれた音を鳴らし、第2楽章で再び現れるワグナー的な重厚さと対比させるやり方は、指揮者のマチェラルがこの曲を熟知していることを感じさせる。この楽章のテンポ運びも、ゆったりとした大河のような流れを十分に意識しつつ自然に前に進んでいくようにしているところなど、聴きながらなんども相槌を打ったほど説得力がある。ある意味で戦闘的かつ勝利を宣言するような終楽章では、各楽器セクションがそれぞれの聴かせどころで力を存分に発揮し、ラモーに発しベルリオーズで革新的に体系化されたフランス近代オーケストラ書法の骨頂を見せるような快演だ。戦闘的ではあるが、トゥッティには常に柔らかみがあり、一度としてアグレッシブにはならない。最終部は、音の塊が大きな波のうねりのように揺れる。色彩溢れる音楽は、聴くだけでイメージが映像のようにふつふつと湧いてくる。曲はフランクの強い影響もあり循環形式を取り入れて構築されており、1、2楽章のモチーフや断片があちこちに出てくるが、それが大いに物語的な想像力を駆りたたせる。マチェラルは、フランス国立管はショーソンを知り尽くしたオケなので指揮するのが楽しい、フランス以外のオケでこの曲をよく知らない団体はかなり手こずる、という意味の発言をしているが、その言葉を裏付けるような素晴らしい演奏だった。
2021年2月11日 14時30分 パリ、シャンゼリゼ劇場