アタイールの作品は、「117:2C」という謎めいたタイトルで、ONCTの委嘱を受けて作曲されたもの。弦楽オーケストラのために書かれたこの作品は、いくつもの小さなリズム・モチーフでできており、それがいろいろな形で絡み合ったり重なり合ったり、または受け答えしながら曲が進んでいく。曲は、スリラーのチェイスシーンを彷彿とさせる、執拗な音の繰り返しで始まる。作品全体を通して、楽器のブロックが対立するが、それは例えばヴァイオリン対チェロ・コントラバスというように、音域ブロックであることが多い。追いかけっこやかくれんぼなどのように、これらのブロックが交互に、または追われるように、あるいはイミテーションで、ヴァリエーション風に演奏される。指揮者はそれぞれのブロックを非常にはっきりと演奏することで、一方的な会話のような効果を作り出している。アタイールのエクリチュールからは、問いと答えが連想されるが、それぞれが相手の話を聞かずに主張し続けているような印象を受ける。プログラムには、作品の説明(どのように作曲したか、その構想など)の代わりに、題名と同じくらい謎めいた、次のように始まる詩のようなテキストを掲げている。
数字になる
ただかつての存在の面影
そこ
名前として持っていたあらゆるもの以前に
私たち
言いたくない
ノン
これらの言葉からはある種の距離が感じられる。このつかみどころのない距離を、音の追いかけっこのような形で表現したかったのだろうか。
最後の曲、チャイコフスキーの「ロミオとジュリエット」では、マキシム・エメリヤニチェフがさらに踊るような指揮ぶりを見せた。彼は全身で指揮をし、自分の中に躍動している音楽を体全体で表現することで、オーケストラに語らせる。彼の解釈はかなり個人的で、対旋律や、必ずしも明らかには聞こえないメロディやリズムが強調されることがままある。しかしながら、叙情性が作品全体を貫き、強調されたリズムと対をなしている。すでに数年前から彼の指揮で何度も演奏しているオーケストラは、その意図をよく理解しているかのように、見事に反応しているのが印象的だった。
トゥールーズ、La Halle aux Grains、2021年3月19日
Maxim Emelyanychev : direction
Aylen Pritchin : violon
Orchestre national du Capitole de Toulouse
ATTAHIR 117:2C (création mondiale)
PROKOFIEV Concerto pour violon n°2 en sol mineur opus 63 ; Symphonie n°1 en ré majeur opus 25 « Classique »
TCHAÏKOVSKY Roméo et Juliette, ouverture fantaisie
プリチンは2019年にオネゲル、プロコフィエフ、フランセ、バルトークのソロ作品を集めたCDをリリースしている。合わせて聴くのもよい。
* 1861年建造。ミディ運河を通って輸送されてきた穀類を貯蔵するために建築され、穀類市場として1940年代まで使用されていた。1950年代に階段状の客席を装備し多目的ホールに改造。1970年代からはトゥールーズ国立キャピトル管弦楽団の本拠地となっている。