無観客コンサートを続行するフランス国立管弦楽団 Orchestre National de France が2月11日に行った演奏会に、チェリストのニコラ・アルトシュテット Nicolas Altstaedt がシューマンの協奏曲で登場。音楽を奥深くえぐるような、濃い、しかししつこくはない独特の演奏を聴かせた。第2部はショーソンの交響曲。こちらはドイツ的な重厚さとフランス的なふくよかな音色が溶け合った好演だった。
会場はシャンゼリゼ劇場で、開始は14時30分。劇場が閉鎖されている現在、コンサートの時間も日中や夕方に移動させることが多い。その日の夜20時からフランスミュージックFrance Musiqueの夜のコンサートの時間枠で放送された。
ニコラ・アルトシュテットを生で聴くのは今回が初めてである。昨年4月にアルファレーベルから2枚組でリリースされたベートーヴェンのチェロ作品集(フォルテピアノはアレクサンダー・ロンキヴィッヒ Alexander Lonquich)が素晴らしく、是非コンサートで聴きたいと思っていたが、今シーズンのフランス国立管弦楽団との共演が中止にならず無観客で行われるというので、プレス用の席を確保してもらった。
フランスミュージックの番組リプレイのページを見ると、アルトシュテットはすでに2019年7月のモンペリエ音楽祭で同じシューマンの協奏曲で同オケと共演している。
アーティスト入り口から舞台裏を通って客席に着いたのが14時25分ごろ。オケの団員はまだ思いおもいに楽器を鳴らしている。指揮者のクリスティアン・マチェラル Cristian Măcelaru (ルーマニア出身で、フィラデルフィア管やケルン放送響を経て、今シーズンから同オケの音楽監督に就任している)はリラックスした様子ですでに指揮台にいる。簡単なリハーサルまたは要所のおさらいを終えたという雰囲気だ。無観客でビデオ収録もないので、服装もまちまち。14時30分になるとこれまでの混沌とした音が嘘のように一瞬静かになり、すぐに演奏が始まった。フランスでのコンサートは必ず数分、時には10分以上遅れて始まるので、かえって新鮮だ。
まずはシューマンの『序曲、スケルツォと終曲』。3つの楽章を明確に性格づけて、メリハリが効いている。音に厚みはあるが、決して重くならず、終曲の喜びにあふれた曲想がとくに心地よく響く。