パリ国立高等音楽院 Conservatoire national Supérieur de Musique et de Danse de Paris (CNSMD) が、19世紀から現代までの新曲視唱・視奏試験課題の楽譜を一挙に公開しました。
音楽院のエクトル・ベルリオーズ・メディア図書館のサイトの、上方メニュー右端にあるLecture à vueをクリックすると入れます。
La lecture à vue (初見演奏)とdéchiffrage(楽譜を初めて読むこと)は同義で、いずれも、初めて渡された楽譜をその場で読んで歌う、または演奏することを言います。Déchiffrageという言葉は暗号や古代文字の「解読」という意味でもよく使われます。
この教科は、音楽院が創設された時から存在し、学年末の試験や、日本で言う卒業試験(いわゆる一等賞=プルミエ・プリなどの取得試験をさします)の必須課題でした。19世紀末からは入学試験にもこれが課題として取り入れられています。
課題の楽譜は試験のために特別に作曲家や教授に依頼され、自筆でした。この自筆楽譜をコピーの専門家がやはり自筆で清書して課題に出されていましたが、20世紀半ばから徐々に印刷されるようになりました。
楽譜は19世紀初めから21世紀はじめまでのものをデータベース化しており、作曲者、教科、年代などから検索する事ができます(左の赤いメニューの上から概要、作曲者、教科、年代、詳細検索)。ダウンロードできるのはパブリックドメインにあるもので、まだ著作権が残っているなどの理由でここで見ることのできないものは、メディア図書館に行けば紙媒体で閲覧する事ができます。
試しに一つ検索してみましょう。
Lecture à vue の最初のページの左のメニューで、 recherche par auteur(作曲家検索)をクリックします。(写真はクリックで拡大)
出てきたページの上のアルファベットで作曲家を探します。Debussyを探したいのでDをクリックします。名前の右にある数字から、ドビュッシーは1曲作曲した事がわかります。
名前をクリックしてみましょう。データベースのレジュメで、クラリネットのためのト長調の曲が1910年に課題となっていたことがわかります。データベースのタイトル部分をクリックします。
出てきたページの上方には、前のページで見た情報が表示されます。
ページの下の方にいくと、楽譜を含むデータボックスが現れます。
楽譜部分をクリックすると、ポップアップ画面で楽譜を見ることができます。1ページ目は図書区分の総括情報と使用上の警告です。2ページ目からスキャンした楽譜になっています。
ピアノ伴奏法Accompagnement au pianoは、歌のメロディだけが書かれていて、これにいきなり伴奏をつけよ、という試験です。実践和声学では、数字付き低音に和声付けするのが課題です。(この数字付き低音はフランス式ですので、日本の音楽大学で学ぶものとは少し違っています。)その他にも面白い楽譜が盛りだくさん。
創設以来、西洋音楽教育のトップレベルを維持する音楽院の教育を物語る宝庫。研究対象としても興味深いこれらの楽譜は、一度入るとなかなか抜け出られなくなりそうです。
写真は全てLecture à vue の画面キャプチャ