*この記事は2ページ 日本ではまだほとんど知られていなくても、フランスでは古参として名声を誇る音楽祭は多い。サン・ミシェル・アン・ティエラッシュ古楽音楽祭もその一つ。オルガニストのジャン=ミシェル・ヴェルネイジュ氏が音楽監督を務めるバロック・古楽音楽祭で、今年で35回目を数える。最終日となる7月4日、ラ=フォンテーヌ生誕400年をテーマにした、レ・ザール・フロリサンのコンサートを聴いた。 ***** フランス王ゆかりのサン・ミシェル・アン・ティエラッシュ修道院 場所となるサン・ミシェル・アン・ティエラッシュ Saint-Michel en Thiérache は、フランス北部の、ベルギー国境に近い場所に位置するかつての修道院。ここに最初の礼拝堂が建設されたのは693年というから、約1400年の歴史を誇る。現在残っている修道院の建物は教会と回廊で、12世紀に遡る。その後17世紀はじめに、ヴェネツィア出身の修道士ジャン=バテイスト・ド=モルナが、修道院を改修した。ド=モルナは、マリー・ド・メディシス(メディチ)がフランス王アンリ4世と結婚しフランスにやってきたとき、その宮廷の一員として王女に同行し、アンリ4世と後継のルイ13世の相談役となった人物。この改修の際、教会に古典様式のファサードと身廊が加えられ、現在に至っている。 教会の内部は響きが良いことで知られており、バロック音楽の録音も度々行われている。 選りすぐりの音楽家を迎えて質の高い演奏会を提供 さて、サン=ミシェル音楽祭では、毎年6月から7月にかけての土曜と日曜に、午前と午後に2つないし3つのコンサートが行われる。昨年は新コロナウィルスで一部のコンサートのみ無観客配信となったが、今年は6月6日から7月4日まで、日曜日のみ2つのコンサートを、時間帯を若干変更して開催された。 音楽監督のジャン=ミシェル・ヴェルネイジュ Jean-Michel Verneiges 氏は6月、筆者のインタビュー(仏語)に答えて、今年は長く中止されていたコンサートがやっと再開できるようになったばかりで、プログラミングは政府が提示してくると考えられるコンディションに基づいて、いくつかのヴァージョンを想定。35回目となる今年の音楽祭では、無観客となった去年の分も取り戻すべく、選りすぐりの演奏家を迎えて、質の高い演奏会を提供することに心を砕いた、と語っている。メゾソプラノともコントラ・アルトともいえる独特の深い声をもつリュシール・リシャルド Lucile Richardot、日本でも人気のフィリップ・ジャルスキー Philippe Jaroussky、ハンガリーの実力派ソプラノでヨーロッパでは人気を誇るエモケ・バラット Emőke Baráth とアンサンブル・イル・ポモドーロ Ensemble Il Pomo d’Oro、実力派のソプラノ、サンドリーヌ・ピオー Sandrine Piau とヴェロニク・ジャンス Véronique Gens の「対決」、ヴァンサン・デュメストル Vincent Dumestre 指揮ル・ポエム・アルモニーク Le Poème Harmonique によるヴェネツィアの音楽と歌。そしてフランス学士院会員の作家エリック・オルセナ…
Les Arts Florissants
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フランスでは新コロナウィルスで聴衆を交えてのコンサートが禁止されて久しいが、レザールフロリサン Les Arts Florissants も他のアンサンブルと同様、無観客コンサートの収録を何度か行っている。2月28日、屋根と外壁の修復工事の足場が取り払われたヴェルサイユの王室礼拝堂(ニュース記事はこちら)で、シャルパンティエの作品によるプログラムを収録した(フランス語の記事はこちら)。 これまでの無観客コンサートの収録にはジャーナリストと関係者のみが招待されていたが、この日初めて、メセナや「友の会」の会員なども集い、プライベートコンサートのような雰囲気で行われた。 プログラムは聖母へのオマージュをテーマに、フランス・バロック音楽の巨匠としてジャン=バティスト・リュリ Jean-Baptiste Lullyと双璧をなすマルカントワーヌ(マルク=アントワーヌ)・シャルパンティエ Marc-Antoine Charpentier の宗教曲をたっぷり聴かせるもの。 シャルパンティエの宗教曲はその演劇性と絢爛さが特徴。個人の内面の祈りを表現するというよりは、イエスやマリアの優越性を劇的に表現することに重点が置かれている。それはまさに「バロック」という時代の特徴でもある。 ウィリアム・クリスティ William Christie がポジティフ・オルガンから弾き振り。ソロパートは合唱団の団員が歌っているが、直前になって健康上の都合から出演できなくなった歌手の代役として、オペラなどでも精力的に活躍しているマルク・モイヨン Marc Mauillon が登場。彼の音域はテノールだが、この日はバスのパートを歌った。通奏低音のヴィオラ・ダ・ガンバには堅実派の若手、リュシル・ブーランジェ Lucile Boulanger の顔も見られる。 収録は午後3時から。この日は雲ひとつない晴天で、礼拝堂には燦々と輝く太陽の光が入り込み、演出効果も抜群。普段のコンサートは夜のため、礼拝堂がこんなに明るい場所だとは想像できにくい。 そんなコンサートの全貌が、4月9日から QWEST TV (有料)で楽しめる。このインターネットテレビは、ジャズミュージシャンで音楽プロデューサーのクインシー・ジョーンズ Quincy Jones が創設した局で、これまでジャズ、ポップ、ポピュラーなどの音楽を配信していたが、このコンサートでクラシックにも門を開いた。 ビデオの監督はフランスのジョン・ブランチ John Blanch。2年ほど前に、ある音楽コンクールでの配信に参加し、それ以降急激に事業を拡大している、まだ若手のプロデューサーだ。彼の監督によるコンサートやオペラのビデオはすでに数多く、日本の愛好家もどこかで目にしているはずだ。 2021年2月28日、ヴェルサイユ、王室礼拝堂 Chapelle Royale de Versailles プログラム Marc…
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(2018年1月にMixiに投稿した記事に一部変更を加えました。) レ・ザール・フロリサン Les Arts Florissants は、2019年度の「ル・ジャルダン・デ・ヴォワ Le Jardin des voix」研修生を1月10日から募集する。 ル・ジャルダン・デ・ヴォワは、17, 18世紀の音楽を専門とした若い歌手のためのアカデミー。 レ・ザール・フロリサンの芸術監督で創立者のウィリアム・クリスティー William Christie と共同芸術監督・指揮者のポール・アグニュー Paul Agnew が共同で運営する。 2019年度はモーツァルトの《偽の女庭師》を、8月にフランス・ヴァンデ地方の「ウィリアム・クリスティーの庭」フェスティバルと、秋のワールドツアーで上演する。 募集の流れは次の通り。 1月10日 募集要項をオンライン化 2月9日 募集締め切り 3月2日〜5月3日 オーディション 1月10日より、フェースブックページとツイッター @lesartsflo から募集要項のダウンロードが可能。 公式サイトの関連ページ(英語)はこちら。 Photo : An English Garden – Jardin des…