シャンティイー城で行われた室内楽の音楽祭「レ・ク・ド・クール・ア・シャンティイー Les Coups à cœur à Chantilly 」。 最終日10月2日のコンサートは、朝11時から城の絵画ギャラリーで、「若い芽コンサート」。そして17時からは、音楽祭最後のコンサートが大厩舎ドームで行われた。この稿では朝のコンサートを主にレポートする。 ***** 「若い芽のコンサート」 朝のコンサートには、マルタ・アルゲリッチ Martha Argerich の孫ダヴィッド・チェン David Chen(14歳)と、彼とよく舞台を共にしているアリエル・ベック Arielle Beck(13歳)が登場。二人ともすでに昨年、第1回の音楽祭に出演し、ソロや4手連弾で弾いたほか、アルゲリッチとも共演した。 コンサートではまずベックが4曲、ついでチェンが4曲、それぞれ30分ほどのハーフプログラムを演奏し、最後に二人の連弾で締めくくった。 舞台と客席の距離が遠い「大厩舎 Les Grandes Écuries 」のドームで聴いた昨年とは異なり、絵画ギャラリーはコンサート会場としては小さくサロン的な雰囲気で、彼らの演奏を改めて細部までよく聴くことができた。 アリエル・ベック アリエル・ベックは今年、パリ郊外のサン=モール=デ=フォセ Saint-Maure-des-fossés 音楽院に入学。ちなみにここはパリ国立高等音楽院の前院長で作曲家のブリュノ・マントヴァニ Bruno Mantovani が院長を務めており、活発な教育活動が行われている。 ベックは近年はビリー・エイディ Billy Eidi およびイーゴリ・ラスコ Igor…
マルタ・アルゲリッチ
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フランス王家ゆかりのシャンティイー城で、昨年から室内楽の音楽祭が行われている。今年は9月末から10月はじめに、3日間にわたって開催れた。 この音楽祭を2回に分けてレポートする。第1回はシャンティイーについて。 ***** フランス王家ゆかりのシャンティイー城 シャンティイー城をご存知だろうか。パリから北へ車で1時間足らずの所にあるフランス王家ゆかりの城で、最初に建築されたのが14世紀半ば。その後、建築、改装・増築を重ね、現在の形になったのが19世紀終わりだ。 のちにヴェルサイユの庭師として壮大な庭園を建造したル・ノートル Le Nôtre は、ここに大運河やフランス風庭園を造営して確固たる名声を築いた。 18世紀半ばには、城主コンデ公が王ルイ14世を迎えて開催した祝祭で、宴席を取り仕切っていた料理人フランソワ・ヴァテル François Vatel という人物が、仕入れた魚が届かなかった為に自殺したという有名な逸話がある。これはジェラール・ドパルデュー Gérard Depardieu 主演で映画『宮廷料理人ヴァテール』(なぜ名前が「ヴァテール」と長音になっているのか理解に苦しむが)にもなっているので、ご存知の方もいるかもしれない。 また、シャンティイー城内にある美術館には、ルーブルの次に重要な絵画コレクションを擁しており、とくにオマール公爵アンリ・ドルレアン(1822〜1897)のポートレートギャラリーは門外不出のコレクションとして世界に知られている。 レ・ク・ド・クール・ア・シャンティイー Les Coup de cœur à Chantilly そんな歴史あるこの城で、昨年から「レ・ク・ド・クール・ア・シャンティイー Les Coups à cœur à Chantilly 」という室内楽の音楽祭が開かれている。訳せば「シャンティイーのお気に入り」などとなるだろうか。 音楽監督はピアニストのイド・バル=シャイ Iddo Bar-Shaï。2020年に第1回を開催する予定だったが、新コロナウィルス対策に伴う劇場など文化施設の封鎖で叶わなかった。昨年2021年に行われた第1回は、6月に限られた聴衆だけに場を公開しつつ、ネット配信で開催された。昨年はマルタ・アルゲリッチ Martha Argerich が80歳を迎えたことから、これをどうしても祝いたいというバルシャイの思いにより開催された。…