サン=サーンス Camille Saint-Saëns のヴァイオリン曲というと、『序奏とロンド・カプリチオーソ Introduction et Rondo Cappricioso』、『ハヴァネーズ Havanaise』、『死の舞踏 La Danse macabre』などが有名だが、このアルバムはそういう有名曲を故意に避けて知られざる名曲を集めた貴重な一枚。 アルバムには、サン=サーンスが20代半ばに作曲した『ヴァイオリンコンチェルト』第1番から、75歳の作品『ミューズと詩人 La Muse et le Poète』までが収録されており、生涯全体を俯瞰できるようになっている。このアルバムを聴くと、彼が20代の早い時期にすでに独自のスタイルを打ち立て、それが晩年まで受け継がれているのがわかる。 ヴァイオリンのジュヌヴィエーヴ・ローランソー Geneviève Laurenceau は、かつてトゥールーズ・キャピトル管弦楽団のコンサートマスターをつとめ、数年前からはフリーとなって精力的に演奏活動を繰り広げるかたわら、カウンターテナーのフィリップ・ジャルスキーが主催するアカデミーのハイレベルクラスでヴァイオリン講師として後進の育成にあたっている。彼女は繊細さと大胆さをあわせ持つ実力派で、広いレパートリーを誇っているが、その中でもフランス音楽は得意中の得意。共演の、チェロのヤン・ルヴィオノワ Yann Levionnois、ハープのポーリーヌ・アース Pauline Haasもフランス国内外で認められた若手。ルヴィオノワはアンドレ・ナヴァーラ国際チェロコンクールで1位となるなど、多くの国際コンクールに入賞。2018年、エリザベート王妃国際音楽コンクールの第1回チェロ部門では本選に残っている。アースは今年2022年のヴィクトワール賞(グラミー賞に相当するフランスの音楽賞)の新人部門にノミネートされている。 このアルバムで、本場のエスプリ溢れるフレンチ・ヴァイオリンを堪能してはいかが。 ***** Camille Saint-Saëns (1835-1921) ロマンス Romances op.37 & op.48 1871/1874 ヴァイオリン協奏曲 第1番 Concerto pour violon no.1…