今年3月から2ヶ月間、新コロナウィルスの拡大によってフランスでも都市閉鎖が実行された。それによって窮状に陥ることを憂えたクラシックの歌手たちが3月15日に公開状を発表。ドイツなどの政府が文化セクターに巨額の援助金を投入していたのに対して、フランス政府の対応が遅れていたことを警告し、公的にさらなる支援を要求することなどが目的だった。そこには、ロベルト・アラーニャ、ステファン・ドゥグー、バンジャマン・ベルナイム、カリーヌ・デエ、レア・デザンドレ、サビーヌ・ドヴィエル、パトリシア・プティボン、リュドヴィク・テジエ、マリアンヌ・クレバサなどが名を連ねていた。その延長線として、歌手たちの相互援助を目的として UNiSSON というアソシエーションが4月に結成。 メンバーは全て、オペラ、ミュージカル、歌曲など、いわゆるクラシックベースの「声楽」をフランスで職業とする人たちからなっており、経済的にもっとも困難な状況にある同僚を援助するとともに、パワハラ、モラハラ、セクハラなどの被害にあっているメンバーを支えていこうという意図もある。 そのUNiSSONが10月17日にオペラ・コミック劇場で初のコンサートを開催した。直前の14日にマクロン大統領が夜9時から翌朝6時までの外出禁止を発表。開催が危ぶまれたが、20時の開始時間を17時に繰り上げて予定通り行われた。コンサートの様子は10月31日に国営ラジオ局France Musiqueで放送され、その後もリプレイで聴くことができる。 Chères adhérentes, chers adhérents, Nos voix résonnent et résonneront toujours. Samedi 31 oct à 20h sur @francemusique, partenaire du concert solidaire @UNiSSON_asso https://t.co/ucVd1KQwtT@MinistereCC #retransmission #concertsolidaire @Opera_Comique pic.twitter.com/c8RBMEjm4o — UNiSSON (@UNiSSON_asso) October 30, 2020 選曲とキャスティングの妙…
カリーヌ・デエ
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フランスとフランス語圏のオペラファンに最も読まれているオペラ専門サイト、「フォーラム・オペラ Forum Opéra」。フランス全国は言うに及ばず、ヨーロッパ各地で上演されているオペラの批評を網羅し、時にはヨーロッパ以外のオペラハウスでの公演もレポートしている。レヴューの大多数はプルミエを扱ったもので、翌朝7時には出ている。12月のパリでのある公演はなんと上演後の深夜1時にレヴューが載っていた。恐るべき速さだ。執筆陣はその道の通ばかりで、記事は詳細におよび、良い批評を得ると、歌手たちはもちろん、指揮者やオーケストラ、そして劇場までもこぞってネット上にシェアするという、人気と権威を誇るサイトだ。 「フォーラム・オペラ」は、年末にその年のアーティストなどを分野ごとに選んでいる。それも、100%読者の投票によるセレクションで、得票のパーセンテージも同時に発表される。つまり人気投票でもあるわけだ。メジャーレーベルの影響などを大なり小なり受けている伝統的な雑誌のランキングとは異なる、ファン主体の「本音」を垣間見ることができる。 2019年のベスト・アーティストが今日(2020年1月2日)発表された。日本ではほとんど馴染みのない名前や作品もあるかもしれないが、ヨーロッパでは皆実力派として知られた、または上昇中の歌手や、話題をさらった作品ばかり。現在の、主にフランスでのオペラの動向を知る上での興味深い結果となっている。 ラインナップは次の通り(コメントは筆者)。サイトの該当ページはこちら。 女声歌手 1位 プリティ・イェンデ Pretty Yende (34,1%) 2位 カリーヌ・デエ Karine Deshayes (28,3%) 3位 ヴァニナ・サントニ Vannina Santoni (14,4%) 4位 ガエル・アルケーズ Gaëlle Arquez (12,1%) 5位 マリナ・レベカ Marina Rebeka (11,1%) 1位のプリティ・イェンデは1985年南アフリカ生まれのソプラノ。スカラ座の声楽アカデミーで学び、2011年にドミンゴ主催のオペラリア・コンクールで優勝。2013年にメトロポリタン・オペラにフアン・ディエコ・フローレスのパートナーとしてデビューして急上昇した。ソニーからアルバムを2枚リリースしている。5位中、2位から4位の3人がフランス人。カリーヌ・デエはコロラトゥーラ・メゾでロッシーニなどが得意。ヴァニナ・サントニは、最近では12月にシャンゼリゼ劇場で、映画監督のジェームズ・グレイが演出して話題になった『フィガロの結婚』で伯爵夫人を歌って喝采を得た。ガエル・アルケーズは、フランスでのバロック音楽の再興のメッカと謳われたサント(夏にバロックを中心とした音楽祭が開かれている)で生まれ、アフリカのコートジボワールで育ったメゾ。5位のマリナ・レベカはリガ生まれのソプラノで、ローマのサンタ・チェチーリア音楽院で学んでいる。待望のパリ初の単独リサイタルが昨秋行われ、ファンをうならせた。 La Traviata (G. Verdi) – « Un di, felice, eterea » (Pretty Yende & Benjamin Bernheim), Opéra…