1幕オペラ『マンガカフェ』が6月にパリのアテネ劇場 Théâtre de l’Athénée で上演されました。それに先立ち、作品は5月17日にパリ北部近郊のコンピエーニュという街で世界初演されました。台本と作曲を担当した作曲家のパスカル・ザヴァロ氏、指揮者のジュリアン・マスモンデ氏、演出のカトリーヌ・デューン氏、ソプラノ歌手で主人公のトマ役のエレオノール・パンクラジー氏に集っていただき、自由に語ってもらいました。 パスカル 2チャンネルの電車男の話はよく知ってるよ。根本的には嘘だと思ってるけど、どこまで本当でどこまで嘘なのか、誰にもわからない。けれど大事なのは、たくさんの人がこの話が本当だと思っていたことじゃないかな。 全員 そうそう。 エレオノール でもほんとに? その話って嘘だったの? パスカル 誰も確認した人いないし。 エレオノール 私が読んだ電車男の前書きはこの話は本当だって言ってるし、二人が初めて エッチした日付まで書いてあったわよ。 パスカル うん、その時点では本当だったかもしれないね。 カトリーヌ ああ、二人はそこまでいったのね。 パスカル もちろんだよ。これは正真正銘の恋愛物語だから。 ジュリアン そんなこと全然知らなかったよ。 パスカル 僕は日本で生活したことがあるんだ。1986年と87年だった。あの頃はまだ携 帯とかなくて、みんな電車の中ですごく大きな白黒マンガ(マンガ週刊誌・月 刊誌)を読んでたね。そんなものはフランスにはなかったから、とってもびっ くりして見てたんだ。これは自分の中で、日本の強烈な思い出として残ってる。 『マンガカフェ』ができるまで パスカル 僕が2008年に「高校生作曲家大賞 Grand Prix Lycéen des compositions」をもらった時、新しい作曲のために、若い世代に向けて、十分に現代的でインパクトのある、高校生にわかりやすいテーマを探してたんだけど、その時すでに電車男に注目してたんだ。オタクがいろんな手を使って思いを寄せる彼女の気を引こうとして、結局最後はハッピーエンドという、すごくわかりやすい話だよね。それを三重奏曲にしてタイトルは『デンシャオトコ』。ラヴェル音楽祭でラヴェルの三重奏かと思いきや『デンシャオトコ』をやったんだよ。 今回の話は、1年半ほど前にジュリアンから電話をもらったんだけど、バーンシュタインの『ハイチの騒動』とカップリングできる新作オペラを上演したいということだったんだ。それがまた、明日返事が欲しいっていうんだよ。2日後にアテネ劇場の支配人に会うことになっていて、そこで十分説得力のあるプロジェクトを提示したいって言うんだ。あの時、そういう曲としては『電車男』しかなかったけど、これはいいアイデアだと思ったね。テーマは恋愛物語だし、まさに現代が舞台だし。バーンシュタインも、彼が生きていた時代の現代テーマを扱ってて、まあこっちは悲しい話だけど一応恋愛ものだしね。どちらも、今の時代を舞台で表現するということだね。 電車男の虚構性と真実味 パスカル…