スイスのヴェルビエ音楽祭 Verbier Festivalで、7月19日から30日の間に5回のリサイタルでモーツァルトのソナタ全曲演奏の快挙を成し遂げた藤田真央さん。 東京では今年から3年をかけて行われる全曲演奏会ですが、ヴェルビエのツィクルスは、藤田さんが知らないうちに音楽祭音楽監督のマーティン・エングストローム Martin T:son Engstroem が決定していたそうです。 ***** 音楽祭中の7月20日、真央さんが滞在していた山小屋でお話を伺いました。 お会いしたのは、1回目のリサイタルの次の日の朝。このリサイタルで、ある箇所をほんのちょっと間違って弾いてしまった真央さん。かなり緊張していたとのことで、その日少し体調を崩してしまったそうですが、お会いした時にはもう元気になっていました。 さて、どんなお話が出てくるでしょうか? [Podcast] 藤田真央「モーツァルトっていろんなことができるんです」 藤田真央さんの5回の演奏会は、Medici.tv のリプレイで視聴することができます。(日本のファンに宛てたメッセージビデオもあります) (写真はクリックで拡大) ヴェルビエならではのエピソードを一つ。「ゴミをどこに捨てたらいいのかわからなくて、溜まりっぱなしになってるんです〜」と言っていた真央さん。ヴェルビエでは道に大きな円形のコンテナがあって、そこに自分で捨てに行くようになっているのですが、「遠いんですよね〜」。確かに、一番近いコンテナでもかなり距離があり、溜まって重くなってしまったゴミを捨てに行くのはちょっと大変かも。あのあと、どうしたのでしょうか? 音楽祭では、7月28日に予定されていたアルカディ・ヴォロドスのピンチヒッターとして、急遽(前日に)アレクサンドル・カントロフ Alexandre Kantorow のリサイタルが決定。奇しくも、2019年のチャイコフスキーコンクールのピアノ部門1位と2位が再び集うことになりました。 Voir cette publication sur Instagram Une publication partagée par 藤田 真央 (@maof1128)
インタビュー
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日仏バイリンガルインタビューの第一弾として、根本雄伯さんにご登場いただきました。 1990年代からフランスを本拠に活躍する根本雄伯さん。日本での少年時代より編曲に興味を持ち、東京藝大時代にはできる限りの授業を履修して、垣根を超えた総合的な音楽家を目指されました。 渡仏後もエコールノルマル音楽院、パリ高等国立音楽院で総合的に学び、ホルン奏者として、指揮者として、作曲家として多角的かつ精力的に活動していらっしゃいます。その豊かな活動の様子はこちらでご覧になれます。 フランス北部のオパール海岸(コート・ドパール)沿いで、ムジカ・ニゲラ音楽祭を開催している根本さん。昨年秋の再度の劇場閉鎖の直前に縮小版を開催することができました。また、今年3月には、パリのアテネ劇場で、ご自身が編曲したオッフェンバックとシェーンベルクの作品を二部作として披露。当初、数回の公演予定が、劇場閉鎖中ということもあり、主にプロや関係者のみを招いて1回につき30人という観客数制限の中、ゲネプロと本番の計2回の公演を行うことができました。 コロナ渦のフランスでは、秋の一時期を除いて、昨年春から約1年にわたって劇場などの文化施設が閉鎖されていましたが、来たる5月19日から再開、段階的に観客数を増やしていくことを4月末に政府が発表。再び活気が戻りつつあります。根本さんとムジカ・ニゲラも、これを機会に新たな活動を展開されることが期待されます。 ムジカ・ニゲラの最新の2枚、 Ravel と Chausson のCDは、フランスでは批評家からも愛好家からも非常に好意的に受け入れられました。(クリックで拡大) * インタビューは同じ質問をフランス語で、次に日本語で投げかけ、それに答えていただく形にしていますが、下のコメント欄にご意見をお残しください。今後の参考にさせていただきます。
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1幕オペラ『マンガカフェ』が6月にパリのアテネ劇場 Théâtre de l’Athénée で上演されました。それに先立ち、作品は5月17日にパリ北部近郊のコンピエーニュという街で世界初演されました。台本と作曲を担当した作曲家のパスカル・ザヴァロ氏、指揮者のジュリアン・マスモンデ氏、演出のカトリーヌ・デューン氏、ソプラノ歌手で主人公のトマ役のエレオノール・パンクラジー氏に集っていただき、自由に語ってもらいました。 パスカル 2チャンネルの電車男の話はよく知ってるよ。根本的には嘘だと思ってるけど、どこまで本当でどこまで嘘なのか、誰にもわからない。けれど大事なのは、たくさんの人がこの話が本当だと思っていたことじゃないかな。 全員 そうそう。 エレオノール でもほんとに? その話って嘘だったの? パスカル 誰も確認した人いないし。 エレオノール 私が読んだ電車男の前書きはこの話は本当だって言ってるし、二人が初めて エッチした日付まで書いてあったわよ。 パスカル うん、その時点では本当だったかもしれないね。 カトリーヌ ああ、二人はそこまでいったのね。 パスカル もちろんだよ。これは正真正銘の恋愛物語だから。 ジュリアン そんなこと全然知らなかったよ。 パスカル 僕は日本で生活したことがあるんだ。1986年と87年だった。あの頃はまだ携 帯とかなくて、みんな電車の中ですごく大きな白黒マンガ(マンガ週刊誌・月 刊誌)を読んでたね。そんなものはフランスにはなかったから、とってもびっ くりして見てたんだ。これは自分の中で、日本の強烈な思い出として残ってる。 『マンガカフェ』ができるまで パスカル 僕が2008年に「高校生作曲家大賞 Grand Prix Lycéen des compositions」をもらった時、新しい作曲のために、若い世代に向けて、十分に現代的でインパクトのある、高校生にわかりやすいテーマを探してたんだけど、その時すでに電車男に注目してたんだ。オタクがいろんな手を使って思いを寄せる彼女の気を引こうとして、結局最後はハッピーエンドという、すごくわかりやすい話だよね。それを三重奏曲にしてタイトルは『デンシャオトコ』。ラヴェル音楽祭でラヴェルの三重奏かと思いきや『デンシャオトコ』をやったんだよ。 今回の話は、1年半ほど前にジュリアンから電話をもらったんだけど、バーンシュタインの『ハイチの騒動』とカップリングできる新作オペラを上演したいということだったんだ。それがまた、明日返事が欲しいっていうんだよ。2日後にアテネ劇場の支配人に会うことになっていて、そこで十分説得力のあるプロジェクトを提示したいって言うんだ。あの時、そういう曲としては『電車男』しかなかったけど、これはいいアイデアだと思ったね。テーマは恋愛物語だし、まさに現代が舞台だし。バーンシュタインも、彼が生きていた時代の現代テーマを扱ってて、まあこっちは悲しい話だけど一応恋愛ものだしね。どちらも、今の時代を舞台で表現するということだね。 電車男の虚構性と真実味 パスカル…