(2017年1月にMixiで発表したものに修正・加筆しました。) 氷点下の気温が続くパリで、寒さをものともしないヴァイオリンとピアノのデュオコンサートを聞いた。プロ・ミュジシス Pro Musicis というコンサートアソシエーションが主催する、国際コンクール入賞者を招いた一連の演奏会の一つで、ピアノのマリー・ヴェルムラン Marie Vermeulin と、ヴァイオリンのエルサ・グレテール Elsa Grether によるデュオ・リサイタルである。 本題に入る前にプロ・ミュジシス Pro Musicis について触れておこう。フランスには、ボランティアの方々の貴重な時間と力を借りて運営されているコンサートアソシエーションがたくさんあり、それぞれ独自の活動を行っている。大部分が若手支援を活動の中心に据えており、個人宅で行われるプライベートコンサートから、ホールを借りて未来の大演奏家を送り出すものまでさまざまだが、プロ・ミュジシスは後者に入る。 プロ・ミュジシスは、国際コンクールで受賞歴がある若手演奏家をサル・コルトーのコンサートで紹介する一方、1965年から年に一度、プロ・ミュジシス賞 Prix Pro Musicis を設けている。受賞者には、名ピアノ教師として名を馳せるドミニク・メルレ Dominique Merlet、ヴァイオリンの巨匠パトリス・フォンタナローザ Patrice Fontanarosa 、最近オペラを退き多様な活動を行っているソプラノ、ナタリー・デッセイ Natalie Dessay(日本語ではデッセイで通っているが、フランス語の発音では「ドゥセ」がもっとも近い)などが名を連ね、世界で活躍する逸材を排出している。その傍ら、障がいのある子供達、介護を要する人々を中心に、盲目の方々、受刑者なども対象に、Concerts Partage(シェアコンサート)も開催している。これはサル・コルトーのコンサートの出演者が、参加者とふれあい(シェア)ながら行うコンサート。ちなみに昨シーズン(2015年10月〜16年5月)には、サル・コルトーでのコンサート7回、シェアコンサート14回が行われ、プロ・ミュジシス賞には11カ国から32人・グループが応募。三重奏団のトリオ・ザディグ Trio Zadig とピアニストのガスパール・ドエーヌ Gaspard Dehaeneが賞に輝いた。 会場は、エコール・ノルマル音楽院の構内にあるサル・コルトー Salle Cortot。このホールは、シャンゼリゼ劇場の設計者オーギュスト・ペレの設計によるアール・デコ調のホール(客席数約500)で、1928〜29年の建築。最近は、昨年、チェリストのジェローム・ペルノーを中心に若手を集めて活動を開始したパリ室内楽センターや、ピアニストのジャン=フィリップ・コラールが芸術監督を務める、フランス音楽国際ピアノアカデミーなど(2016年創設)がここを拠点とし、とみに活況をおびている。これらの団体については、追ってインタビューなどを掲載する予定。 さて、マリー・ヴェルムラン Marie Vermeulin とエルサ・グレテール…