パリのフィルハーモニーホールは9月1日、アンドリス・ネルソンス Andris Nelsons 指揮バイロイト祝祭管弦楽団 Bayreuther Festspielorchesterとともに2021〜22年シーズンが開幕した。ソリストはまず第一部でテノールのクラウス・フロリアン・フォークト Klaus Florian Vogt が、休憩を挟んだ第二部ではソプラノのクリスティーン・ゴーキー Christine Goerke が、ワグナーの『ローエングリン』『パルジファル』『ヴァルキューレ』『神々の黄昏』からの抜粋を演奏した。 ***** コンサート前の衛生パスチェック この日、フィルハーモニーの大ホール、ピエール・ブーレーズ・ホールは、ほとんど満席だった。建物に入る前に、7月下旬から50人以上が集まる文化芸術施設の利用に義務付けられた衛生パス*のQRコードのチェックがあり、これを通過しないと会場に入れない。入り口を入ると、通常の荷物検査(バッグの中のヴィジュアルコントロールとスキャナーによる金属検査)。これを終えてチケットコントロールを経てようやくホール内に。開演時間間近になると、ホールはほとんど満席となった。衛生パスが義務付けられたため、これまでの規制にあった、観客同士の間を1席開けるなどのフィジカルディスタンスはなくなった。会場内ではマスク着用が義務とされているが、バーは開いており、飲食時はもちろんマスクを外す。 * 衛生パスは、フランスの場合、ワクチン2回接種済みか、72時間以内に行ったPCRまたは抗体検査で陰性を証明するもの。スマートフォンのアプリケーションか、第二回目の接種後発行される証明書類上のQRコードを提示。はじめ1000人以上の集会・催しに義務付けられていたが、7月下旬から50人以上の集会が対象となり、8月時下旬からはレストランなどにも適用されている。 現ディレクター最後のシーズンの開幕 新コロナウィルス下でまだまだ国際移動の規制が厳しい中、あえて総勢100人超ものバイロイト祝祭管弦楽団を招聘したフィルハーモニー。これには、今年限りで長年ディレクターを努めてきたローラン・ベル Laurent Bayle 氏最後のシーズンにふさわしい開幕を、という意図があるのだろうか。4日と5日にはキリル・ペトレンコ Kyrill Petrenko 指揮ベルリンフィルが登場、さらに8日と9日のパリ管(パリ管は数年前からフィルハーモニーの一機構となっている)の定期にはリッカルド・シャイイー Riccardo Chailly がオール・ラヴェル・プログラムを指揮する**。これだけ豪華な開幕は過去にあまり例を見ない。 ** 追記。9月3日午後、シャイイーは来仏ができず、トロント交響楽団とリュクサンブールフィルハーモニー管弦楽団音楽監督のグスタヴォ・ジメノ Gustavo Gimeno が代役を務めるというプレスリリースが届いていた。 K.F. フォークトの限りなく伸びる柔軟な声 コンサートの第一部は、クラウス・フロリアン・フォークト…