フランスのストリート・アーティストJRは、世界中の観光スポットや都市の壁、山などに制作した巨大なコラージュで有名。 5月19日から、エッフェル塔がキャニオンのような岸壁の上にせり立ち、真下に幹線道路が通っているだまし絵(アナモルフォーズ)が披露され、話題になっています。現在工事中のトロカデロ宮の大テラス(ここからはエッフェル塔を真正面に見渡せます)の地面と、工事用の囲いを利用したもの。 Voir cette publication sur Instagram Une publication partagée par JR (@jr) 🇫🇷 #Paris : la #TourEiffel au bord du gouffre avec une œuvre de #JR #StreetArt #Trocadero pic.twitter.com/iVf63TafIZ — TV5MONDE Info (@TV5MONDEINFO) May 21, 2021…
アート
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オルセー美術館は、チュイルリー公園に位置するオランジュリー美術館とともに総体をなしており、その正式名称は Etablissememnt public du musée d’Orsay et du musée d’Orangerie (オルセー・オランジュリー美術館)ですが、これに故ヴァレリー・ジスカール=デスタン大統領の名前を足したものが正式名称になることが、3月29日に発表されました。 #CommuniquédePresse | En accord avec @EmmanuelMacron, @R_Bachelot annonce que le nom du Président Valéry Giscard d’Estaing sera ajouté à la dénomination de l’établissement public du @MuseeOrsay et du @MuseeOrangerie.…
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フランスのノルマンディー地方カルヴァドスといえば、同名のリキュールで有名。もう一つ世界的に有名なのは、バイユーという街に伝わる全長70mに及ぶタペストリー。 タペストリーには、ノルマンディ公ギヨームが1066年のヘイスティングズの戦いで勝利してイングラントを征服し、ウィリアム征服王(Guillaume le conquérant) となった様子が、380のラテン語の記載とともに58のシーンに分けて刺繍で詳細に語られている。最後の2場面が欠損している。1066年4月にイングランドで見られたハレー彗星が描かれており、この彗星を明記した最古の文献となっている。 ノルマンディ公ギヨームがイングランドを征服する様子をギヨーム側の視点に基づいて叙事的に描いている。この出来事に関する歴史的文献が少ない中、貴重な一次資料となっている。場面を次から次へと連続的に表現している様子は、日本の絵巻とも共通する。 「マティルド王妃のタペストリー」とも呼ばれるこの長大な刺繍を全て詳細に閲覧できるサイトがある。バイユー博物館、ノルマンディ戦記念博物館、ジェラール男爵芸術歴史博物館からなる「3 Musées(3博物館の意)」の共同サイトが特別に開設しているもの。ここにある画像が、バイユーのタペストリーの公式デジタル画像だ。リンクはこちら。 ホームページにはタペストリーにまつわる主な数字が掲げられている。それによると、タペストリーに登場する人物は約600人で、他にも馬200頭、さまざまな動物500匹、樹木50種が、1500のモチーフに描かれている。 閲覧するには、ホームページを下にスクロールしてすぐに出てくる Le Panorama en haute définition (高解像パノラマ)の下の画像をクリック。画像の中心部には白文字で Explorer la tapisserie de Bayeux (バイユーのタペストリーを閲覧する)とある。 下方の点(数字)をクリックすると、58のシーンのうち数字に該当するシーンを見ることができる。 右メニューの「TXT」を開くと、タペストリーの各シーンにあるラテン文の翻訳を英語とフランス語で読むことができる。 歴史マニアはもちろん、そうでなくとも大いに興味をそそられるサイトだ。 追記 2月16日 美術専門誌 Connaissance des arts によると、2020年1月に行われたタペストリーの点検作業の結果が2月3日に発表され、2024年から2年間、全体的な「修復」作業が行われることになった。1000年近くの歳月による自然劣化と、壁に固定するために使われていた釘などによる人工的な劣化で破損することを食い止める処置を施す。 写真 © Ville de Bayeux, DRAC Normandie, Université de…
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ブルターニュ地方の写真家マテュー・リヴラン Mathieu Rivrin さんが、1月30日に同地方を襲った嵐「ジュスティーヌ」の際に撮った写真が瞬く間に世界中で話題になった。波の合間から海神ポセイドンが顔を出しているように見えるのだ。 Voir cette publication sur Instagram Une publication partagée par Mathieu Rivrin Photographies (@mathieurivrin_photographies) 実はこの写真は「ジュスティーヌ」をテーマにした一連の写真の中の一枚で、Lesconilレスコニルという小さな港の堤防に砕け散る波を撮ったもの。その連作が、リヴランさんの個人サイトにアップされている。 Instagram のストーリーを見ると1秒間の波の動きがよく見て取れる。 ちなみにLesconilの場所はこちら Instagramのリヴランさんのプロフィールページにはchasseur de tempête、つまり嵐を追う写真家という「肩書き」が付いている。海が幾重にも豊かな表情を見せるブルターニュ地方で、海を中心に風景を撮り続けている。 ポセイドンの写真が発表されて話題になった後の2月8日、国営テレビ局 France3 のブルターニュ地方局が、リヴランさんのプロフィールを紹介したルポルタージュを放送した。 写真を発表してから携帯電話がなりっぱなしだとか。 一期一会の風景を撮影するコツは「朝、太陽が出るよりも早く起きて、可能ならば灯台に赴き、岩場の合間で陽光に照らされて普段とは違った色に染まる海を撮る。または天候がつくりだす特別な時を選ぶ」ことだそうだ。
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パリのポンピドゥーセンターが2013年から3年間、全面的な改修工事のため閉鎖されることが、1月25日に発表されました。 改修工事ではとくに、アスベストの完全排除と最新の安全基準、エネルギーの最適化を実現。ハンデをもつ人々のために、アクセシビリティも現行基準のものに改善されます。 ポンピドゥーセンターの建物は、1977年のオープン以来、大規模な改修が行われていません。セルジュ・ラヴィーニュ総裁は、「工事の決定は、(2027年に)50周年を盛大に祝い、21世紀にふさわしいセンターとならしめるためのもので、大変に喜んでいます」と語っています。 現在すでに存在するメッス市(フランス東部)のポンピドゥー・センターの別館および海外のポンピドゥー・センターに加え、ポンピドゥー・センター・フランシリアン(広域パリ地方に設置される予定)、マッシー市(パリ南郊)の保存・創造センター「Fabrique de l’art(芸術ファブリック)」、外部機関での展示やデジタルセクションなど、さまざまな開発プロジェクトが進行中です。
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修復工事が続いているヴェルサイユ宮殿。今日は王立礼拝堂 Chapelle Royale と「王女の劇場 Théâtre de la Reine」の修復工事のニュースです。 礼拝堂の外部の修復工事は2018年に始まりました。17世紀の建築以来、部分的な修復は行われてきましたが、本格的な工事は今回が初めてです。主な対象は、屋根とその装飾、屋根組み、ステンドグラスです。屋根職人、大工、石工、彫刻家、ガラス職人、釉薬師、金工、錠前職人など、多彩な「メチエ」の専門家を動員して行われた修復工事も終盤を迎え、このほど、屋根を覆っていた足場が部分的に取り払われました。 🇫🇷 La toiture de la Chapelle Royale est restaurée et désormais complètement dévoilée ! Il faudra attendre le printemps pour découvrir la partie basse où les tailleurs de pierre et sculpteurs…
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2020年4月からグラン・パレで開催予定だった「Noir et blanc 白と黒で」展は、フランス国立図書館所蔵の、写真最初期から現代の作品までのモノクロ写真を集めた大規模な展覧会となるはずだった。しかし新コロナウィルスのとばっちりをうけ、3度にわたって開催が延期。当初の4月8日から7月6日までの会期がまず最初の都市封鎖(3月中旬〜5月中旬)によって延期され、次に11月12日から1月4日が第2回目の文化施設閉鎖(10月下旬以降)で扉がしまったままとなった。さらに、政府が発表していた12月15日からの文化施設開館予定が、結局閉鎖延長となり(その後示唆されていた1月7日からの再オープンも1月末まで延期になった)、3度目の新会期12月6日から2月1日の間も会場は閉まっており、作品は訪れる人のない展示室で眠ったままだ。しかし、パリ市内のフランス国立図書館からの借入ということもあり、今のところ展覧会が中止になるという知らせはない。 グラン・パレでは、展覧会の一部を多くの人に見てもらおうと、作品をパネル化して、2月28日まで13のメトロの駅構内に展示している。 Voir cette publication sur Instagram Une publication partagée par Le Grand Palais (@le_grand_palais) この展覧会は、フランス国立図書館の膨大な写真コレクションの中から、モノクロに絞って約300点の傑作を選りすぐって紹介。発明から150年余りの写真の歴史を網羅するものともなっている。写真家の数は30カ国200人と多彩にわたる。その中には、ナダール、マン・レイ、アンセル・アダムス、ウィリー・ロニ、ヘルムート・ニュートン、ダイアン・アーバス、マリオ・ジャコメリ、ロバート・フランク、ウィリアム・クライン、森山大道、ヴァレリー・ブランなどの名もある。 フランス国立図書館の版画・写真部門には、数十万点の写真が保存されている。うち19世紀の作品は約2000点、20・21世紀の写真は5700点に及び、世界でもっとも重要なコレクションの一つとなっている。その中でもモノクロ写真はとくに充実している。 外出規制が緩和されて美術館が再開するまで、「白と黒で」展は、グラン・パレの公式サイト、 YouTube、インスタグラムなど、ウェブでもさまざまに展開している。 子供用のコンテンツとして初期の写真に焦点を当てたインタラクティブページ、塗り絵、パズル、も面白い。
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ルーヴル美術館が、隣接するテュイルリー庭園の中央路にニレの並木を植樹するため、クラウドファンディングで寄付を募っています。 テュルリー庭園はかつての王宮で、16世紀半ば、カトリーヌ・ド・メディシス(メディチ)が建立を命じ、1世紀後に完成しました。宮廷がヴェルサイユに移された後、革命時には会議場として機能し、その後は元首の公邸として使用されていましたが、1871年のパリ・コミューンで消失。1883年に完全に撤去されました。現在のルーブル美術館のリシュリュー翼とドノン翼の西端をつなぐ形で存在していました。 18世紀に遡ると、1763年4月の火災で消失したオペラ座は、その後テュイルリー宮のGalerie des Machines(機械ギャラリー、ルイ14世紀が劇場に改修)に居を構え、Salle des Machines(機械ホール)またはThéâtre des Tuileries(テュイルリー劇場)と呼ばれてオペラが上演されました。1770年から1782年まではコメディ・フランセーズがここを本拠とし、1775年にはボーマルシェの戯曲『セヴィリャの理髪師』が初演されています。 現在も残るテュイルリー庭園は、ルイ14世の庭師ル・ノートルの設計で1664年から整備されました。現在でも都心の憩いの場所として多くの人が訪れます。 この庭園の中央道 Grand allée の両側にはかつてニラ並木があり、パリを東西に貫く大きな街路となっていました。今回、このニラ並木を再現しようという計画が実現に向けて動き出しました。 実現には、数年前にルーヴル美術館が開設したTous mécènes !(みんなメセナ)というクラウドファンディングシステムを利用して、一般から広く寄付を募ります。 Tous mécènes ! キャンペーンは美術品を購入する目的で利用され、これまでに、クラナッハの『三美神』、フランソワ1世の『時祷書』、『テッシェンのテーブル』などの購入を可能にしてきました。今回のように「環境遺産」の再現のために使用されるのは初めてのことです。 寄付期間は2021年1月15日まで。12月1日の時点ですでに目標金額100万ユーロの76%が達成されています。 参加するには、このページの中頃にあるPARTICIPEZ と書かれた緑色のボタンをクリックして現れたページの一番下(ヘッダーの上)、JE FAIS UN DONというやはり緑色のボタンをクリック。寄付ページに飛ぶので、左上の1.の枠内で、個人の場合は上方のJe suis un particulier を有効化(企業の場合はJe suis une entreprise)し、金額を選ぶか、その下の枠に自由な金額を設定。下方のチェックボックスは、寄付者リストに名前を掲載して欲しければ上、他の人の名前をリストに掲載して欲しければ真ん中、寄付証書を発行して欲しければ下をチェック。 左下の2.の枠には名前・住所等を記載。(*は必須)左上からメール*、国*、M(男性)またはMme(女性)*、名前*、苗字*、住所補足事項、住所*、通称住所、郵便番号*、都市名* 3.の枠は支払い方法(カード)。カードの種類を選択して、カード番号、使用期限(月、年)、クリプト番号を記入。 全て正しく記入し終わったら、上のFINALISER MON…
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パリ・ノートルダム大聖堂の火災時に、修復工事のため尖塔の周囲に組まれていた足場が、11月24日に完全に撤去された。 Les opérations de dépose de l’échafaudage sinistré – Rebâtir Notre-Dame de Paris from Etablissement public RNDP on Vimeo. 足場撤去作業 2019年4月15日の火災によって、その少し前に設置されていた尖塔修復作業用の足場も焼け、一部が溶けて建物と溶接してしまった。そのため、すでに焼け落ちて穴があいた尖塔部分の屋根から、足場および建物そのものが崩壊する脅威に晒されていた。そのため、金属ピースが落下することでドミノ式に建物が崩れすることを防ぐため、足場の解体作業を行う前に、金属製の梁を3層にわたって設置していた。 焼けた足場は4万個の金属ピースからなり、高さ40メートル、重さが200トン近くに及ぶもの。撤去作業は3月から5月の都市封鎖で遅滞していたが、ロックダウンが解除されて間もない2020年6月8日に始まり、昨日11月24日に全行程が終了した。 解体では、まず建物全体を取り囲むように新しい足場を組んで、作業員が古い足場の内部に降りられるようにした上で、焼けた足場の金属ピースを一つ一つ切り外し、これを高さ80メートルのクレーンで運び出す作業を繰り返し行った。 2021年半ばまでノートルダムの修復準備となる様々な作業が行われるが、その一つとして、穴の部分から内部に雨が振り込むのを防ぐための巨大な「傘」が設置されることになっている。 写真 ノートル・ダム大聖堂の足場撤去作業現場 © Pascal Tournaire Jarnias
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ニューヨーク、メトロポリタンオペラでのモーツァルトの『魔笛』上演(1967)のために、シャガールが描いた緞帳が競売にかけられるというニュースをお伝えしましたが、約837.000 €で落札されたということです。日本円にすると1億円強ですが、当初予想されていた落札価格の上限値45万ドルのほぼ2倍です。下限値の25万ドルに比べるとほとんど4倍です。新コロナウィルスで閉鎖を余儀なくされているメトの財政維持に少しは役に立って欲しいですね。 photo © The Metropolitan Opera
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当初3月25日から6月8日迄の開催が予定されていたグラン・パレのポンペイ展。外出制限令で閉館となり、期間中はビデオ、カタログ抜粋、ゲームなど、ウェブ配信(左のリストでコンテンツを選べる)で内容を紹介し、これまでにのべ100万件の閲覧があった。7月1日に再オープンとなるグラン・パレは、同日から9月27日までポンペイ展を開催する。 テレビのFrance5は、外出制限発令後の3月下旬に展覧会に合わせて撮影されたドキュメンタリーを放映したが、2018年に発見された「ジュピターの家」の解説も多く加えた内容の濃いものだった(現在視聴は不可能。展覧会オープンに合わせて再び見れるようになるのを望みます)。写真のカタログは、ウェブ版でインタラクティブ。高画質のモザイクやフレスコ画を堪能し、ポンペイの家屋を臨場感あふれる3Dで「訪問」できるなど、ウェブの長所をふんだんに生かした内容。購入はこちら(仏語。右上のメニューで英語に切り替わります)。 子供用パズル モザイク柄。 子供用パズル 噴火の絵。 (どちらも下にあるボタン – 左から初級、中級、上級 – をクリックすると遊べます。) アナウンス動画 バーチャルリアリティによる、ヴェズヴィオ火山噴火前と噴火後の家屋の様子 2017年に発見されたポンペイの新地区 タイトル写真はポンペイ展ポスター
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徐々に外出制限が緩和されつつあるフランス。先週以降、再オープンする文化施設が相次いでいるが、オルセー美術館は2週間後の6月23日に再オープンとなることが発表された。 3月24日に始まる予定だったジェームス・ティソ展も同月17日のロックダウンを受けて美術館が閉鎖し、展覧会の開催も一時的に中断された。 同展は23日の美術館のオープンとともに公開となり、新会期として9月13日まで延長される。 ドキュメンタリー番組「James Tissot, l’étoffe d’un peintre」の抜粋動画。番組はarte.tvで7月15日まで視聴可能。VODまたはDVDでも見ることができる。 (写真をクリックすると拡大します。sources : commons.wikimedia.org) ジェームス・ティソ(1836〜1902)は、その名前(本名はジャック=ジョゼフ・ティソ。フランス名ジャックに相当するイギリス名がジェームス)とロンドンに定住していたことから英国の画家だと思われがちだが、実はフランス人。1870年代ヴィクトリア朝ロンドンの上流社会やパリのブルジョワ社会を描いて当時の生活を今に伝えている。それ以前の1860年代にはすでにジャポニズムを取り入れた絵画を制作し、1868年には水彩で徳川昭武の肖像を描いている。ティソは徳川昭武がパリ滞在中に絵画教師を勤めていた。 とくに流行の服飾を描いた画家として、モードの歴史と切っても切り離せない人物となっている。4月23日に開催予定だった国際シンポジウムはティソが描いた服飾に焦点を当てており、その概要がオルセー美術館のサイトに掲載されている。 サイトではまた、展覧会に合わせた8回シリーズのポッドキャスト(フランス語)「ジェームス・ティソを探して」が聞ける。 インフォメーション オルセー美術館 午前9時30分〜午後6時、木曜日午後9時45分まで(入館は閉館の1時間半前までが望ましい) 14€ 衛生対策に対応するため、入館時間帯を指定してオンラインでチケットを購入する。11歳以上はマスク着用のこと。 Photo : ドキュメンタリー「James Tissot, l’étoffe d’un peintre」のキャプチャ画面 ; commons.wikimedia.org